日別アーカイブ: 2019年5月10日

移民協定を支持 国連が決議採択 米反対、日本は賛成

朝日新聞(2018年12月21日)

国連総会(193カ国)は19日、モロッコで10日に採択された移民保護の国際協定「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト(世界への約束)」を支持する決議案を152カ国の賛成で採択した。米国、ハンガリー、ポーランド、イスラエル、チェコの5カ国が反対。豪州やオーストリア、イタリア、シンガポールなど12カ国が棄権した。日本や中国、韓国は賛成した。協定は、世界の繁栄や持続的な発展に貢献しているとして世紀の移民を後押しする一方、不法移民を減らす努力の必要性が盛り込まれている。協定は「条約ではなく、法的な拘束力もない」が、各国の規範となることが期待されている。ただ、米国が昨年12月に協定の交渉から離脱。米国以外でも、自国の移民政策に影響与えるとの否定的な声が出ている。

入管法改正案 共生社会の実現は

東京新聞(2018年12月7日)

「漢字・用語難しい」語学習得支援重要に

首都圏大学東京飯田橋キャンパス(東京都千代田区)で週1度開かれている「介護の専門日本語講座」。受講しているのは、首都圏の福祉施設で働きながら介護福祉士の資格取得を目指すインドネシア、フィリピン人、ベトナムの男女。母国と日本で半年ずつ日本語を学んできたが、現場で理解できない日本語も多いと言う。入管法改正による新たな外国人材の受け入れでは、日本語学習に対する公費補助などの支援策ははっきりしていない。首都大東京の西郡仁朗教授は「特に地方は日本語を教えられる人材も少ない。国は半官半民のような組織を全国に設けて日本語学習を支援する必要がある」と指摘する。

「使い捨てやめて」雇い止めの日系ブラジル人
既に働いている外国人は差別的な扱いを日本で受けてきた人が多い。群馬県大泉町のブラジル人、落合シローさん(63)はリーマン・ショックの不況が吹き荒れた2008年秋、派遣社員として18年間勤めた県内のトラック部品製造会社から雇い止めにされた。外国人は原則として派遣社員契約で、雇い止めも日本人の派遣労働者より数ヶ月早く言い渡されたと言う。学校などの都合で子供を日本に残し帰国した同僚もいたといい「俺たちも生活がある。使い捨てはやめてほしい」と訴える。

人口移民労働者1億6400万人所得国に集中

東京新聞(2018年12月6日)

国際労働機関(ILO)は5日、2017年の全世界の移民労働者数が13年より9%増え、推計一億六千四百万人となったとする報告書を発表した。約7割が北米、欧州などの高所得国で働いており「仕事があるから移民が高所得国に集中する結果となっている」と指摘した。移民労働者は高所得国で労働力人口の18.5%を占めており、「各国が適切な政策をとれば、労働市場の需給に適時かつ効果的に対応する手段となる」と分析。

「日本人並み待遇」本当?

毎日新聞(2018年12月6日)

外国人労働者の受け入れ拡大を目的とする入管法改正案が成立すると社会はどう変わるのか。日本で長く暮らす外国人や専門家の話を聞くと、期待を抱いて来日した外国人たちの人権被害の懸念ばかりが膨らむ。 「これまでの技能実習生と言う制度の歪んだ構造が、新たな在留資格に受け継がれています。このままでは人権侵害が頻発することは目に見えている」と憤るのは、外国人実習生らを支援してきた全統一労働組合(東京都台東区」の佐々木汁を書記長。国会で安倍晋三首相は、新在留資格の本で外国人にも日本人と同等の賃金が与えられる、と答弁しているが、佐々木さんは「何の担保もない話」と厳しい口調で指摘する。「現行の実習生制度では、技能実習適正化法で日本人と同等以上の賃金を定めているのに、それが守られていない。入管法改正案にはその規定さえありません。これで、弱い立場にある外国人の待遇をどうやって保障すると言うのでしょうか」

失踪した技能実習星に対して法務省が昨年実施した聞き取り調査を野党7党派が分析、データを3日公表した。それによると、全体の約67%にあたる1939人が最低賃金未満の収入だった。全体では月給が平均十万8,000円で光熱費名目等の控除額が平均3万2,000円だったと言う。現場でも法に反した色が横行しているのに、法規制をなくしても同等賃金が保障される、などと言う説明が信じられるだろうか。
「捏造データで審議をするな!奴隷法案今すぐ廃案!」「実習制度は今すぐやめろ!答弁できない大臣やめろ!」。衆院での入管法改正案強行採決前夜の11月26日、市民約150人が国会前に集まり、講義のプラカードをあげた。

外国人に対する人権侵害は日本人一人ひとりにとっても人ごとではない。「経営者の利益と政治家の利権のために、安くて簡単に使えるもの言わな奴隷が必要と言うことでしょう。社会的弱者を作ってふんぞりかえる、底辺の人たちを固定化する法案です」。抗議集会でこう訴えたのは、労働問題に取り組む若者らの団体「AEQUITAS」(エキタス)の山本耕平さん。最低賃金の引き上げなどを求めて活動を続ける山本さんは、入管法改正案の問題点は「ブラック労働と根本的に同じ」と強調する。「外国人労働者は、奴隷でも機械の部品でもない。日本人も外国人もまともな賃金をもらって、まともな暮らしをするのが当たり前です」

国連の自由権規約委員会や人種差別撤廃委員会などが1990年代から、日本の入管施設の長期収容や難民認定申請者の扱いについて、繰り返し改善を勧告していても、政府は放置したままだ。本当に「待ったなし」で手をつけるべきなのは果たしてどちらなのか。

中絶か帰国か 迫られた実習生

朝日新聞(2018年12月12日)

外国人の技能実習星が妊娠し、強制帰国や中絶を迫られる例が相次いでいる。受け入れ機関側から「恋愛禁止」や「妊娠したら罰金」と宣告されるケースもあり、専門家は「人権上問題だ」と指摘している。
「妊娠、出産、結婚を理由に管理団体や実習実施機関が技能実習生の意思に反し、帰国を強制する行為は違法で、認められるものではない」。実習生の問題が議論された2016年11月の参院法務委員会で、政府はこう答弁している。雇用機会均等法も、事業主は女性労働者に、妊娠や出産を理由に解雇等をしてはいけないと定めている。13年には、中国人技能実習生が妊娠を理由に強制帰国させられそうになり流産したとして富山市の会社側を訴えた裁判で、女性側勝訴の判決が出た。だが、妊娠を理由とした強制帰国や中絶例は後を絶たない。実習生の実情に詳しい指宿昭一弁護士は「恋愛や妊娠を禁止する事は明らかな人権侵害で許されない」「労働者をモノとしか見ていないからだ」と指摘している。

入管法改正案慎重な議論望む声 外国人共生今も手探り

東京新聞夕刊(2018年12月6日)

外国人労働者の受け入れを拡大するため、与党は週内にも出入国管理法改正案成立を目指している。だが、外国人が多く住み、長年にわたり共生を手探りしてきた自治体や団地の住人からは慎重な機能を求める声が出ている。

群馬・大泉町30年で人口2割
群馬県大泉町の町立図書館で毎週土曜日に開かれている町教育委員会主催の「多言語サロン」。講師は日系ブラジル人三世の三沢巌さん(52)。日本語ができないまま25歳で来日し、苦労した。「生活の質を上げるには、日本語を身に付けることがとても大事」と強調。外国人受け入れ拡大については、国主導で対応を充実させないと「なじめない人が増える」と心配する。
町は自動車や電気関連などの工場が集積。日系外国人の就労を解禁した1990年の入管法改正で日系ブラジル人らが増え、結婚や出産などを経て定住化が進んだ。今年9月末で人口約四万一千七百人のうち、外国人は18%の七千五百人。国籍は多様化し、ブラジルのほかペルー、ネパール、フィリピンなど四十四カ国にわたる。
外国人の生活支援は自治体にほぼ「丸投げ」されてきた。町は全国に先駆け町内の小学校に「日本語学級」を設置。外国人の犯罪が報じられると、町が各学校に差別防止を配慮するよう連絡している。役所での手続きのため通訳を採用し、ポルトガル語の広報誌発行、職員が外国人学校で日本の制度やマナーを説明する出前講座も開く。町の本年度当初予算約百二十七億円の関連費用に約一億円を支出している。それでも課題は多い。教育の拡充に加え、外国人の高齢化対策などの課題もあり、村山町長は「受け皿が未整備のまま入管法を変えると、混乱が起きる」と指摘している。

埼玉・川口市 半数入居の団地
5000人近い住民のうち、半数以上中国人を中心とする外国人が占める埼玉県川口市の芝園団地。都心へのアクセスの良さなどで90年代後半から中国人が増え始めたが、かつては日本人と中国人のトラブルが相次いだ。ベランダからゴミを投げ捨てる住民が現れ、ベンチに「中国人帰れ」と落書きされた。団地自治会は「階段や玄関前に私物やゴミを放置しない」など、中国語で生活マナーを紹介した冊子を配布。団地事務所に通訳を配置し、祭りなどの交流の場を増やし、目立ったトラブルはなくなってきた。今年2月には「多文化共生の先進的事例」として、国際交流基金が自治会を表彰した。しかし自治会事務局長の岡崎広樹さん(37)は「今は『共存』しているだけで、互いに協力し合える『共生』となると課題が多い。日本人と中国人の交流の場を作っても、ごく一部の人しか参加しないのが実情だ」と話す。

外国人材受け入れで踏まえるべきことー農業ジャーナリスト

毎日新聞(2019年1月23日)

韓国は日本に先立って外国人就労者を受け入れている。2004年に導入された「雇用許可制」は非専門職の外国人修了者を対象にした制度だ。一方、農業を対象とした「季節勤労者制度」もある。法務省の通達によるもので、在留期間は90日間だ。農繁期だけ人手を必要とする農家で働く外国人不法就労者が後をたたず、制度化を機に不法就労を防止したいという狙いだ。15年から実験的に導入が始まり、徐々に広がっている。ただし問題提起もされている。「季節労働者は雇用許可制のような法的根拠がなく、人権が保護されにくい。基本的には廃止すべきだ」

ベトナム実習生21人に「解雇」 愛知・青果卸 支援者「不当」

毎日新聞(2019年1月22日)

愛知県の青果卸売外車と関連会社の農業生産法人に雇用されているベトナム人技能実習星21人全員が25日も解雇される可能性が高まっている。関係者は「正当な事由なく契約期間途中での解雇はできず、不当解雇にあたる疑いがある」と批判している。青果卸会社の担当者は「農家とのやりとりがうまくいかず、実習を受け入れてくれるところが少なくなってきた」などと説明。青果卸外車幹部は「面倒を見る転職先はある。賃金保障は、相談をしている」とコメントした。技能実習生が突然解雇されるなどのトラブルが相次いでいる。日立製作所笠戸事業所では昨年9から11月、フィリピン人技能実習生99人が実習期間を残して解雇された。実習生の一部は労組を通じて交渉し、日立側が実習生に賃金保障することで合意。1月には技能実習のため来日しようとした中国人10人が入国審査で三日間中部空港で足止めされ、帰国させられた。