東アジアの移民の出版物

イエズス会社会司牧センター(移民デスク担当) 安藤勇SJ
【社会司牧通信195号2017年6月15日】

東アジア地域では、若い人たちの移動が盛んになっている。彼ら/彼女らは仕事を求め、自由な国を探している。貧困から逃れて、自分の将来を含め、家族や子どもたちの教育を心配しながら、どんな苦労に遭っても日本、韓国、台湾などへ出稼ぎに来ている。彼らは普段「移民」と呼ばれている。

この「アジア移住」、すなわち、 東アジアの「MIGRATION」の現像を取り扱う
“Left-Behind Children and the Idea of the Family”(原文英語、2016年、116頁。
頒布価格500円)という本が昨年末に出版された。


東アジア諸国に拠点を持つイエズス会系の移民ネットワークは、以前からアジア
移住問題に関心を持ち、移民労働者と関わりながらその状況についての研究も
続けている。2014年からイエズス会は、この新しい移民ネットワークを結成した。
現在そのネットワークに、日本も含む7か国が加盟している。

昨年、ネットワークのメンバーの経験をもとに、5か国の研究者が自国の移民
たちの現状を取り上げ、本を英語で出版した。この出版物は外国へ出稼ぎに
出掛けた両親の生活状況よりは、あとに自国に残された家族や子どもたちの
目で、新鮮な立場から出稼ぎ労働者の状況等を取り上げている。

本のすべての報告は英語。しかし、少しでも日本の読者が理解できるように日本語の付録(25頁)を作り、様々な教育の場でも使いやすくできている。関心のある方は、当センターまでご連絡ください。

広告

移民のために働くイエズス会のこれから

ベニー ハリー ジュリアワンSJ (JCAP移民ネットワークコーディネーター)
【社会司牧通信195号2017年6月15日】

第36総会以降、イエズス会の中で「識別」という言葉が大流行しています。アルトゥーロ・ソーサ総長は、イエズス会における識別の過程と使徒的計画を審査するための特別顧問を任命しました。イエズス会東アジア・太平洋地域(JCAP)の移民ネットワークとしては、これまでの歩みを見直し、新たな進路を描くために、今年で第4回目となる年次会議を2017年3月23~26日に東京で行いましたが、それはふさわしいことでした。未来のための新しい計画が求められていたのです。


最も重要な議題は、過去3年間の光と影を考慮に入れたうえで、今後5年間の計画を立てることでした。いつになく寒い春でしたが、8つの移民機関から集まった14名の参加者の活気と議論が、イエズス会社会司牧センターを温めました。3人の神学生と、東京移民デスクの若いインターンも加わってくれました。

学習のためのハイライトと教訓

このネットワークは、2014年に、5か国の5つの独自の機関が、イエズス会のアイデンティティを共有していることから始まりました。したがって、最初のステップは、コミュニケーションと統治構造を確立することによって、より緊密な協力体制を築くことでした。メンバーはSkypeやGoogleドライブ、グループメールなどの最新技術をいち早く習得しました。数年間にわたって定期的にSkype会議を行い、年次会議も設けられました。そうした中で、2つの機関が新たに加わりました。

残っている主要な課題は、加盟機関が一般的に、能力としても資源としても非常に限られた小規模なものであるという事実です。特に人材に関しては、イエズス会からの貢献は、ほとんど変わっていません。けれども、韓国のユウッサリは例外です。この働きを重視する韓国管区の決定にしたがって、最近、金浦の2階建ての新しい建物に引っ越しました。この使命に伴い、新しいイエズス会共同体もまた、その近くに設立されました。

それぞれの違いにもかかわらず、移民労働者に関する共通の関心は、協働の中心的部分になりました。同伴と直接サービスの提供は、送り出し国でも受け入れ国でも、移民労働者のニーズに応える中核となりました。参加者は、研究を行う能力を築く必要性と、残された移民の子ども、再定住、ならびに仲介事業の問題について共同プロジェクトを組織する必要性を認識しました。これらの研究プロジェクトは、新しいスキルを教えるだけでなく、加盟機関の中に新たな熱意を生じさせ、彼らが自国の学者や政策立案者たちに働きかけるのを助けました。

ネットワークはまた、4年間にわたり、社会使徒職の枠を超えて移民に関する問題を促進することに努めました。非常に成功した戦略の一つは、JCAPが毎月発行しているニュースレターに記事を載せたことです。これらの記事のおかげで、多くの人々――イエズス会員ではない人も含めて――が、移民労働者に対するイエズス会の取り組みについて知るようになりました。さらに、神学生とブラザーの集まりが2016年にソウルであったとき、移民への関心がテーマとして取り上げられました。イエズス会大学連盟も、移民の現象にもっと注意を払うと約束してくれました。

次の5年間

今後数年間、ネットワークは「拡大」と「アドボカシー」という2つの領域に焦点を絞ります。

ネットワークは移民に焦点を当てた他の機関や地域のネットワークと協働する必要があります。それらのいくつかからはすでに、連携を求められています。司教協議会や教会の移民機関はとりわけ関連しています。香港、タイ、マレーシア、シンガポールなどの国では、イエズス会は移民センターをもっていません。けれども司教協議会や他の修道院が最前線で、移民の権利を推進し、人身取引と闘っています。

イエズス会難民サービス(JRS)との緊密な協働もまた、長期にわたっています。JRSアジア太平洋地区ディレクターのバンバン・シパユン神父は、教会の社会教説によって規定されている「事実上の難民」への派遣に、JRSも同じ関心を促進できるよう活用したいと強く願っています。この表現は、国際条約によっては通常は難民に分類されない、武力紛争、自然災害、経済失策の犠牲者のことを指しています。

この点に関して、JCAPはおそらく、別の地域からインスピレーションを得ることができるでしょう。ラテンアメリカとカリブ海地域のイエズス会移民ネットワーク(RJM-LAC)は、この地域の約83の機関を傘下に収めるグループです。2002年にいくつかの機関の緩やかな連携として始まり、その後様々な変化を繰り返しながら、2011年にRJM-LACとなりました。18か国から、JRS、社会センター、小教区、イエズス会の大学や学校などが集まっています。その中心課題は、中南米の様々な地域から北米に向かっている移民や難民と協力することです。この協働は、様々な種類の移民の間を厳密に区別することが必ずしも役に立たない、混ざり合った移民の流れがあるという現実を認識しています。

プログラムの面でも、アドボカシーに特別な注意を払う必要があります。移民労働者は使い捨て可能な労働力として、彼らの権利や尊厳はほとんど考慮されずに、必要な時にだけ雇われることは明らかです。2020年の東京オリンピックはまさにその典型です。日本政府は、より多くの外国人建設労働者が来るように法律を緩和していますが、社会的重大性に対処する用意ができていないか、対処する気がないようです。それに加えて、人権団体からは奴隷制に等しいと非難されている外国人技能実習制度もあります。

東南アジアに目を向けると、2015年にASEAN経済共同体が発足してもなお、家事労働や農園、建設業に数百万人の外国人労働者がいるということを認めるそぶりすらありません。加盟国は、2007年のASEAN宣言に伴い多くの部門から繰り返し呼びかけられたにもかかわらず、移民労働者とその家族を保護する手段に同意することができませんでした。その代わり、地域のグループは8つの部門に、いわゆるホワイトカラーの専門家に関する規定を設置しました。ネットワークは、各地で移民の権利のためのキャンペーンを開始し、経済的価値にのみ焦点を当てることなく、彼らの尊厳を促進するのに適しています。

一方、国連が2015年に採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」は、政策変更を提唱するためのプラットフォームを提供しています。多国間のイニシアティブとして、国家間の対話のための国際的に認識できる話し方を提供しています。イニシアティブに掲げられている17の目標の多くは、移民労働者やその他の脆弱な移民に関するもので、出身国や在留資格にかかわらず、基本的サービスを含む社会的保護への権利を保障しています。経済成長に憑りつかれている中で、JCAP移民ネットワークを含む市民団体は、単なる経済開発だけでなく、人間中心の開発を強調すべきでしょう。

この計画は、アジア太平洋地域のイエズス会による、真剣な取り組みを必要とするでしょう。JCAPは、ネットワークの基盤を築くためのリソースを惜しみなく提供してきましたが、この計画を実現するためにはより多くのことを行わなければならず、より多くのリソースが必要となります。例えば、東京で行った今年の年次会議は、イエズス会日本管区の支援なしには実現できなかったでしょう。イエズス会にとって、このような寛大さは珍しいことではありませんが、現在の取り組みがより大きくなったときには、より一層歓迎されるでしょう。

シンポジウム

東京での会議は、ネットワークによる初の共同出版を記念したシンポジウムによって終了しました。『残された子どもたちと家族の概念』という本は、移民労働者の子どもたちの運命について、5か国でなされた研究の成果です。

その後、アジア太平洋地域における挑戦についての議論が続きました。主な挑戦は、現実には国境を越えた現象にどのように対処するかですが、私たちの働きの多くは現場で、あるいは性質によってもせいぜい全国のレベルです。ネットワークを構築することは、この限界を克服するための戦略です。それでもなお、能力と深い貢献を改善していく必要があります。東京での識別と計画は、今後数年間の新しい方向性を示すのにとても役立ちました。

JCAP migrants’ network SYMPOSIUM, on “The realities of migration in East Asia”.

インフォメーション
東アジア7ヶ国からの移民労働者民間ネッワークの14人代表が来日に従って、東京で、「東アジアの移民移動の現状」についてシンポジウムが行われます。
とき: 2017年3月26日 (日) 午後3:00~5:00
場所: 岐部ホール (イグナチオ教会構内)404号室
Email: migrantdesk.jsctokyo@gmail.com

ご出席をお待ちしております。

2017-03-poster-for-jcap-migrants-network-meeting

INFORMATION
A team of 14 delegates of a private network of 7 East Asian countries will gather in Tokyo and hold a SYMPOSIUM, on “the realities of migration in East Asia”
Date:   March 26, 2017 (Sunday), from 3:00-5:00PM
Place:  Kibe Hall 4th Floor (St. Ignatius Church by Yotsuya Station)
Room number 404
Email: migrantdesk.jsctokyo@gmail.com

Participation is free. All are welcome!

足立インターナショナル・アカデミー(AIA)NPO認証申請を提出

管区だより 2017年 1月 (萱場 基神父、SJ)aia-npo-statusボランティアと子どもたち(AIAの前で)、中村塾長(後列一番左)

足立インターナショナル・アカデミー(AIA)が東京都に提出していた、NPO(特定非営利活動法人)認証申請書類が1月5日に受理された。現在、東京都のホームページに提出した申請書類一式が開示され、都民に縦覧されている。また、都による一連の審査も進められており、3月いっぱいには東京都知事による認証がなされる見通しである。

AIAは、イエズス会日本管区の他に、幼きイエス会・聖心会・メルセス会が呼びかけ、小暮中間期生(当時)の奮闘により、2008年6月1日に任意のボランティア団体として設立された。以来、東京都足立区で、外国籍の移住者の日本語教育と子どもたちへの学習支援を行ってきた。代表を安藤神父、塾長を中村友太郎氏(上智大学名誉教授)が務めてきた。その他、運営委員として歴代の管区長補佐(梶山神父・作道神父・山岡神父)が関わってきた。また、子どもたちの学習支援に日本管区の神学生や日本語学生も携わってきている。

このようなAIAの社会的責任を明確にしながら、諸活動をよりいっそう充実したものとするために、2016年5月16日に「NPO設立準備委員会」を立ち上げ、「設立趣旨書」や「定款」などの申請書類を整備して、このたびの申請にこぎつけた。

スリランカへの一斉送還(2016 年 9 月 22 日)に対する抗議声明

安藤 勇 SJ、イエズス会社会司牧センタースタッフ

法務省入国管理局は、2016 年 9 月 22 日、スリランカ人 30 人をチャーター機で強制 送還しました。チャーター機による一斉送還は、2013 年 7 月 6 日(フィリピン人 75 人)、同年 12 月 8 日(タイ人 46 人)、2014 年 12 月 18 日(スリランカ人 26 人、ベト ナム人 6 人)、2015 年 11 月 25 日(バングラデシュ人 22 人)に続く5回目になります。 本一斉送還は、非正規滞在者であっても保障されるべき適正手続を無視するものであり、 私たちは、これに強く抗議します。

送還を忌避する外国人の強制送還について、私たちはこれまでにも様々な人権人道上 の問題を指摘してきました。過去の4回のチャーター機による一斉送還では、送還後の 被送還者に対する民間の支援団体や専門家による現地調査などからも、被送還者のなか に、日本にパートナーや配偶者や子など家族がいる人、20 年以上の長期にわたり日本 に定着している人、難民申請したものの不認定・棄却された庇護申請者など、様々な事 情を抱えて母国に帰ることができない人たちがいました。彼・彼女らは突然の強制送還 後、生活の基盤もなく支援もないままに送還先に放置されている実態も明らかになりま した。また、被送還者の選定基準の不透明さや送還プロセスにおける人権侵害について も問題を指摘してきました。しかしながら、日本政府はこうした私たちの問題指摘や抗 議にも誠実に答えることなく、5回目の送還が強行されました。

法務省の発表によると、今回のスリランカへの一斉送還では、送還を忌避していた 24 歳から 58 歳までの男女 30 人が送還され、その中には日本での長期滞在者(最長者 は滞在 27 年 9 ヶ月)も含まれているとのことです。

法務省はまた、今回送還された人の中に難民申請者は一人もいなかったとしています。 しかしながら、今回送還された人の中には日本において庇護を求めていた人も多くいま す。「難民申請者がいない」というのは、送還前(多くは送還の直前)に難民不認定処 分に対する異議申立てに対する棄却決定の告知を行うことにより、送還時点で難民認定 申請手続中の人はいなかったというに過ぎません。2014 年 12 月に実施されたスリラン カへの一斉送還に関する前川清成参議院議員による質問主意書への政府答弁からは、送 還された 32 人中 29 人に難民申請の経歴があり、そのうち 26 人が送還前日に異議却下 通知を受けたという事実が明らかにされています。

そして、送還された人たちの中には、行政の行った難民不認定処分が正しかったかを 裁判所で検証する機会を奪われたまま、送還された人が含まれています。すなわち、難 民の異議申立てに対する棄却決定に対しては、その告知から6ヶ月間、裁判所に訴え出 ることができ、異議棄却決定の際、難民申請者に対してもそのように説明されます。それにもかかわらず、法務省入国管理局は、実際には、この6か月を待つことなく、棄却 決定の告知からわずか 24 時間以内に送還するなどして、被送還者から難民不認定処分 取消訴訟を提起する機会を奪いました。これは憲法第 32 条で難民申請者にも保障され る「裁判を受ける権利」を剥奪するものであり、また、裁判所による最終判断が下され ていないにもかかわらず、難民である者もしくは帰国すれば拷問等受ける可能性のある 者を送還する点で、難民条約第 33 条及び拷問等禁止条約第3条の定める「ノンルフー ルマン原則」に反するものであり、憲法上、国際条約上到底許されるものではありませ ん。

くわえて、遠く庇護を求めてきた人に対し、裁判への道を遮断し、行政の一存で判断 の告知と同時に送還する行為は、自由や人権という価値を信奉し、立憲主義を採用する日本の地位を貶めるものであり、恥じるべきものであるといわざるを得ません。

また、日本人の配偶者、永住者の配偶者などの家族がいる人たちが、一斉送還の直前 に仮放免の更新が認められずに収容され、家族や代理人にも連絡がとれないまま送還さ れたとの情報が、被送還当事者やその家族から支援団体に直接寄せられており、送還の プロセスで抵抗しないよう手錠などが使われていたとの証言もあります。

私たちは、日本に暮らすすべての人びとの人権が等しく尊重される社会を求め、彼・ 彼女らの家族との結合や日本での定着性、保護の必要性などが十分に考慮され、合法化 が検討されることを強く望みます。

私たちは、チャーター機等による、適正手続きを保証しない強制送還が行われている ことに強く抗議するとともに、日本政府に対し、非正規滞在の外国人に対する施策を根 本的に見直すよう求めます。さらに、航空会社においては人権を尊重し、人権侵害に加 担しないという企業の社会的責任を果たすよう求めます。

2016 年 10 月6日

イエズス会社会司牧センター
特定非営利活動法人     移住者と連帯する全国ネットワーク
カリタスジャパン
全国難民弁護団連絡会議
特定非営利活動法人      名古屋難民支援室
難民・移住労働者問題キリスト教連絡会
認定 NPO 法人      難民支援協会
特定非営利活動法人      難民自立支援ネットワーク
日本カトリック難民移住移動者委員会
RAFIQ(在日難民との共生ネットワーク)

東アジアの移民労働者のためのイエズス会ネットワーク

安藤 勇 SJ、イエズス会社会司牧センタースタッフ
【社会司牧通信189号2016年6月15日】

   伊勢志摩で開催されたG7サミットの閉会式から数日後、マスメディアは現代の奴隷制についての衝撃的な報告を発表しました。それはギャラップ調査によって客観的に裏付けられた、グローバルな調査結果です。詳細なデータや、国と地域の報告に関する分析は、Webサイトの「Global Slavery」で読むことができます。調査の衝撃的な最終結果によれば、まさにこの2016年現在、世界の167か国で、約4580万人もの人々―その多くは女性と子ども―が、現代の奴隷制の何らかの犠牲者になっているというのです。中でも、アジア太平洋地域が特に深刻な影響を受けていると思われます。(ジャパン・タイムズは2016年5月31日に、「現代の奴隷制に日本は取り組んでいないと研究が非難」という記事で、この事実を明らかにしました。)

  日本が世界で41番目に悪い状況の国とされている現実を知れば、日本の多くの人々はきっと驚くでしょう。世界の奴隷制調査の「国別:人口における現代の奴隷の推定割合」という箇所では、日本は全人口1億2700万人のうちの29万人、およそ0.22%の人が現代の奴隷だと考えられています。

  移民デスクでの経験から私たちは、こうした現代の奴隷の大部分は、日本で働き、生活している外国人労働者であると考えています。もちろん、それが一般的傾向だとまでは言い過ぎでしょうが、同時に、それはごく稀な現実だとか、単なる反日のプロパガンダに過ぎない、という考えはナイーブでしょう。

  先日日本に集結したG7の首脳たちは、地球上で最も裕福で、最も影響力のある国の代表です。彼らは世界の経済システムの再構築について扱い、ヨーロッパにおける現在の移民危機についても触れました。けれども、現代の奴隷制と外国人移民労働者の危機的状況については、彼らの議題の中にありませんでした。

イエズス会の移民労働者ネットワーク
  イエズス会東アジア太平洋管区連盟(JCAP)がカバーしている東アジア地域には、二つの異なるタイプの国が共存していると考えられます。一方では、東アジアのいくつかの国は、自国の貧困の解消や緩和を期待して、外国に何十万人という労働者を送り出します。その一方で、東アジアの他の国々は、自国をより豊かに発展させるために、そうした労働者を喜んで受け入れています。古典的な国際表現を用いるのであれば、そこにははっきりとした「南北問題」が存在します。日本、韓国、台湾、そして香港(?)は、豊かな北半球の中心に位置しています。その他の東アジア諸国の人々は、仕事を得るために、あるいは貧困から逃れるために、自分たちの生活をよくするために、外国へと出稼ぎにいくのです。

  イエズス会は一般にどちらの国にも、数は多くありませんが、移民労働者と関わる小さな機関をもっています。韓国はその取り組みをまさに再編成したばかりで、新しいユウッサリ・センターが建てられ、3人のイエズス会員がそこで働いています。台湾では、レールム・ノヴァールム・センターを通して、外国人労働者との関わりについて、大きな成果をあげています。フィリピンでは、UGATという機関とイエズス会のいくつかの高等教育機関の様々なネットワークのもと、しっかりと組織されています。インドネシアでは、移民労働者との長い関わりを再編成中です。日本では、イエズス会社会司牧センターを拠点に、外国人労働者に寄り添い、必要な法律サービスや、子どもと親に対する基礎的な教育を提供しています。ベトナムでは、国内の移民労働者に同伴し、彼らが地方から都市部に働きに来る際に訓練を提供し始めました。イエズス会難民サービス(JRS)タイは、ミャンマーからの何十万人もの移民労働者をケアしてきた長い伝統があります。

JCAPの現在の変化

  非常に重要な変化と挑戦は、JCAPの長上たちが、優先課題についての長期的な計画(「ソーシャル・マッピング・レポート2009」)を受け入れ、発表したことによって生じました。東アジア太平洋地域における移民労働者とエコロジーが、イエズス会の主要な優先課題とみなされたのです。

  移民労働者の状況という観点から、過去に行われてきたどちらかといえば個々の努力は、JCAPのネットワークの中で、より調整されるようになりました。そのネットワークは、2011年5月15~17日にソウルで行われた、移民に関するイエズス会の初のワークショップによって活発になりました。それ以来、ワークショップは毎年のように開催され、2012年にはマニラ、2013年にはジャカルタ、2015年には台北で開かれました。
Seoul 2011
  最近では、2016年4月19日に、東アジアのイエズス会移民ネットワークの7か国から、13人の代表者がベトナムのホーチミンに集まりました。このネットワークのコーディネーターを務め、今回の会議を招集したのは、インドネシア人のベニー神父(Fr. Benedictus Hari Juliawan)です。会議の中では、共通のプログラムと、外国人労働者の現状に焦点を当てた3年間の研究プロジェクトについて話し合われました。研究プロジェクトの主要テーマは、外国人労働者の自国への帰還、もしくは彼らが暮らし働いていた社会への統合、そしてブローカーの闇の世界です。実際に、この最初の共同研究プロジェクトは、6月中に英語で出版される予定です。

HCMC 2016

  こうしたテーマに関する文献は、確かに数多く存在します。けれども、このネットワークが目指しているのは、移民労働者のために場を提供し、彼らの真のニーズに対するより良い対応を見つけることです。ネットワークの強みの一つは、外国人移民労働者を送り出す国の中で実に精力的に携わっている人だけでなく、受け入れている国の中で働いている人もいることです。例えば、韓国のユウッサリは、韓国に働きに来るカンボジアの若い女性たちのために活動しています。台湾では、台湾に家政婦として働きに来るインドネシアの若い女性たちのために活動しています。日本では、日本の小さな工場で働いているフィリピン人、ベトナム人、アフリカの人々のために活動しています。イエズス会は、外国人労働者と寄り添い、送り出し国と受け入れ国の二つの側で協力して活動しようとしています。

  言葉の壁は、日本や台湾、韓国に来る外国人労働者にとって、大きな障害になっています。言葉の知識が不足しているせいで、彼らの多くは入国した新しい社会から締め出されてしまいます。彼らは支援者や、真に信頼できる情報をもっていないからです。こうした事情は一般に、彼らの生活状況や職業選択を耐えがたいほど悪化させてしまいます。私たちの司牧活動や教会は、彼らに手を差しのべ、限られた方法ではありますが、小さくされた人々に対して、仲間として支援を提供することができます。国が外国人労働者を受け入れるのは、国の経済成長のために、安くて若い労働力を必要としているからです。けれどもベトナムやインドネシア、あるいははるか遠くナイジェリアなどから来た労働者は、自分たちの家族が貧困から抜け出し、よりよい暮らしと教育、自由な機会を得ることを求めています。私は50代のフィリピン人労働者と出会いました。彼は、ビザの期限が切れているため、フィリピンに強制送還されるのではないかと恐れていました。また、フィリピンに残した彼の家族が生活するために必要な週7000円のお金をこれ以上送ることができないということに、不安を抱えていました。けれども日本や台湾、韓国にとって興味があるのは、単に安くて若い労働力です。外国人労働者は、一時的に滞在することはできますが、やがて帰らなくてはならず、代わりに新しい人がやって来ます。「ギブ・アンド・テイク」、それがこのゲームの名前です。

  移民労働者とその家族の人間としての尊厳を認め、彼らの人権を尊重することは、私たちのネットワークを強化し、非キリスト教的環境の中でキリスト教的価値を証しするために、大きな力をもっています。活動領域と可能性は、無限大です。

教育格差を縮める取り組みを

カトリック新聞  2015年11月29日  第4316号

AIA teachers orientation Nov 2015学校教育を考える

「外国につながる子ども」たちの学校教育を考えるシリーズ。第39回は、4つの教育修道会が7年前に立ち上げた低費私塾「足立インターナショナル・アカデミー」(AIA)を紹介する。外国人労働者が多く暮らす東京都足立区で、日本語に不自由する子どもたちの学習支援や大人たちの日本語識字教育を行っている。11月7日には、関東地区カトリック小中高連盟「中高宗教部会」の教員らがAIAで第14回勉強会を行い、日本社会の教育の現状について考えた。

東武線梅島駅から徒歩10分、町工場などが立ち並ぶ住宅街で、AIAは民家の2階を借りて、毎週火曜日から土曜日まで(午前11時~午後7時)、日本語や主要教科の学習支援を行っている。
対象は、外国人移住労働者の子どもや、国際結婚で生まれた「ダブルの子ども」らなど、小学生から高校生まで、そして日本語の読み書きができない大人たち。AIAは予約制で、学生や社会人のボランティア講師に一対一で勉強を見てもらうことができる。しかも月謝は2千円で、何回でも学習できる。昨年度は、のべ1460人が利用している。
労働者のまち、足立区は人口の3%が外国人(外国人登録者)で、東京23区で2番目に外国籍住民の割合が多い。
小学校の設置数は都内最多の72校で、全校が区立。しかし、中学校は39校、高校は11校と少ない。教育の機会均等や進学保障という観点で見ると、教育環境は「良好」とは言い難いだろう。
そうした中で、2008年、教育事業を行っている4修道会(イエズス会、聖心会、幼きイエス会、ベリス・メルセス宣教修道女会)がAIAを立ち上げた。日本経済を〝底辺〟で支えている外国人労働者等の子どもたちの成長を支えると同時に、そこで関わるボランティア自身も共に成長する「共育」を目的としている。

AIA代表の安藤勇神父(イエズス会)は、「外国につながる子ども」たちの現状をこう話す。
「例えば20年以上日本に暮らして、日常会話ができるフィリピン人の大人でも、日本語の読み書きができないケースが多くあります。日本語の問題に加え、親が共働きや夜勤で、子どもの勉強を見てあげられないので、子どもは日本語が身に付かず、低学力になってしまうのです」
しかも公立学校は学齢主義を導入しているため、日本語の習熟度に関係なく、彼らは年齢相当の学年に編入させられる。AIAに通うエチオピア人の少年も来日したばかりで、困難に直面している。

その少年は、地元の公立中学校に編入し、年齢より1つ下の学年で勉強することになったが、英語が話せる教員は1人だけ。他の教員とは意思疎通が図れず、日本語の授業も全く分からず、毎日教室の中で一人ぼっちで座ったまま過ごす。安藤神父がAIAスタッフとして週3回中学校に足を運び、その少年の学習支援に携わるが、限られた時間で、年齢相当の基礎学力は見に付けられない。
しかし中学校側はこう言い放ったという。「勉強ができなくても大丈夫です。ちゃんと卒業させますから」。形式的に中学卒業資格が得られたとしても、現実問題として「低学力」は「低学歴」につながり、それは「職業選択肢の激減」の要因となる。結果的に「貧困の連鎖」が続いていくことになる。
そうした「負の連鎖」を断ち切ろうと、AIAは、低費で通える唯一の私塾として活動しているのである。子どもたちは「算数の不安がなくなった」「日本語ができるようになって、先生や友達と話す時は楽しくなった」と喜んでいる。しかし、交通費がないため、AIAにも通えない子どもたちがいるのだ。

教会にできる支援

11月7日、関東地区の「中高宗教部会」の勉強会で、宗教科や倫理科の教員20人ほどがAIAを見学、安藤神父とAIA塾長の中村友太郎・上智大学名誉教授から子どもたちの状況について学んだ。
初めて〝現場の人〟から話を聞いたという栄光学園(神奈川)倫理科の小野邦彦教諭は、こう語った。
「心に響くものがありました。AIAの子どもたちは、本校では出会えない子どもたちばかりです。本校の生徒たちは、将来、社会(システム)をつくる側の人間になっていきます。AIAの子どもやそこで働いている人たちに出会い、この問題を知った上で社会に出ていってほしいと思いました」
中高宗教部会は、年に3回勉強会を開き、宗教等の授業内容について学び合っている。今回は、カトリック学校でも行われているグローバル教育(地球規模的課題の理解と解決のための教育)について、「自分たちの足元から見つめ直してみよう」と、AIAを研修の場に選んだという。
担当者の一人、曉星中学・高等学校宗教科主任の松本洋教諭は、「ミッションスクールならではのグローバル化とは何なのか、宣教者が貧しい子どもたちを助けるためにカトリック学校を始めたその原点に目を向けたいと思いました」と語る。
AIAでは、稲刈りなど、課外活動も実施している。また高校進学をする際には、支度金として「奨学金」も支給している。
安藤神父は、各カトリック学校にできることとして、①AIAを〝姉妹校・兄弟校〟として位置づけ交流する②デカセギ労働者の子どもを1人以上引き受ける③日本語教室を開く④AIAの高校進学支度金を支援する――などを提案しつつ、こう強調した。
「カトリック教会は、貧しい人たちの教会と言いながら、こういう子どもたちの学校(教育)に興味を持たず、何もしないなら、それは罪だと思います」と安藤神父は語っていた。 AIAは、☎ 03-5888-5206

(次回は11月29日付掲載予定です)