カテゴリー別アーカイブ: こども・大人教育

足立インターナショナル・アカデミー(AIA)NPO認証申請を提出

管区だより 2017年 1月 (萱場 基神父、SJ)aia-npo-statusボランティアと子どもたち(AIAの前で)、中村塾長(後列一番左)

足立インターナショナル・アカデミー(AIA)が東京都に提出していた、NPO(特定非営利活動法人)認証申請書類が1月5日に受理された。現在、東京都のホームページに提出した申請書類一式が開示され、都民に縦覧されている。また、都による一連の審査も進められており、3月いっぱいには東京都知事による認証がなされる見通しである。

AIAは、イエズス会日本管区の他に、幼きイエス会・聖心会・メルセス会が呼びかけ、小暮中間期生(当時)の奮闘により、2008年6月1日に任意のボランティア団体として設立された。以来、東京都足立区で、外国籍の移住者の日本語教育と子どもたちへの学習支援を行ってきた。代表を安藤神父、塾長を中村友太郎氏(上智大学名誉教授)が務めてきた。その他、運営委員として歴代の管区長補佐(梶山神父・作道神父・山岡神父)が関わってきた。また、子どもたちの学習支援に日本管区の神学生や日本語学生も携わってきている。

このようなAIAの社会的責任を明確にしながら、諸活動をよりいっそう充実したものとするために、2016年5月16日に「NPO設立準備委員会」を立ち上げ、「設立趣旨書」や「定款」などの申請書類を整備して、このたびの申請にこぎつけた。

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教育格差を縮める取り組みを

カトリック新聞  2015年11月29日  第4316号

AIA teachers orientation Nov 2015学校教育を考える

「外国につながる子ども」たちの学校教育を考えるシリーズ。第39回は、4つの教育修道会が7年前に立ち上げた低費私塾「足立インターナショナル・アカデミー」(AIA)を紹介する。外国人労働者が多く暮らす東京都足立区で、日本語に不自由する子どもたちの学習支援や大人たちの日本語識字教育を行っている。11月7日には、関東地区カトリック小中高連盟「中高宗教部会」の教員らがAIAで第14回勉強会を行い、日本社会の教育の現状について考えた。

東武線梅島駅から徒歩10分、町工場などが立ち並ぶ住宅街で、AIAは民家の2階を借りて、毎週火曜日から土曜日まで(午前11時~午後7時)、日本語や主要教科の学習支援を行っている。
対象は、外国人移住労働者の子どもや、国際結婚で生まれた「ダブルの子ども」らなど、小学生から高校生まで、そして日本語の読み書きができない大人たち。AIAは予約制で、学生や社会人のボランティア講師に一対一で勉強を見てもらうことができる。しかも月謝は2千円で、何回でも学習できる。昨年度は、のべ1460人が利用している。
労働者のまち、足立区は人口の3%が外国人(外国人登録者)で、東京23区で2番目に外国籍住民の割合が多い。
小学校の設置数は都内最多の72校で、全校が区立。しかし、中学校は39校、高校は11校と少ない。教育の機会均等や進学保障という観点で見ると、教育環境は「良好」とは言い難いだろう。
そうした中で、2008年、教育事業を行っている4修道会(イエズス会、聖心会、幼きイエス会、ベリス・メルセス宣教修道女会)がAIAを立ち上げた。日本経済を〝底辺〟で支えている外国人労働者等の子どもたちの成長を支えると同時に、そこで関わるボランティア自身も共に成長する「共育」を目的としている。

AIA代表の安藤勇神父(イエズス会)は、「外国につながる子ども」たちの現状をこう話す。
「例えば20年以上日本に暮らして、日常会話ができるフィリピン人の大人でも、日本語の読み書きができないケースが多くあります。日本語の問題に加え、親が共働きや夜勤で、子どもの勉強を見てあげられないので、子どもは日本語が身に付かず、低学力になってしまうのです」
しかも公立学校は学齢主義を導入しているため、日本語の習熟度に関係なく、彼らは年齢相当の学年に編入させられる。AIAに通うエチオピア人の少年も来日したばかりで、困難に直面している。

その少年は、地元の公立中学校に編入し、年齢より1つ下の学年で勉強することになったが、英語が話せる教員は1人だけ。他の教員とは意思疎通が図れず、日本語の授業も全く分からず、毎日教室の中で一人ぼっちで座ったまま過ごす。安藤神父がAIAスタッフとして週3回中学校に足を運び、その少年の学習支援に携わるが、限られた時間で、年齢相当の基礎学力は見に付けられない。
しかし中学校側はこう言い放ったという。「勉強ができなくても大丈夫です。ちゃんと卒業させますから」。形式的に中学卒業資格が得られたとしても、現実問題として「低学力」は「低学歴」につながり、それは「職業選択肢の激減」の要因となる。結果的に「貧困の連鎖」が続いていくことになる。
そうした「負の連鎖」を断ち切ろうと、AIAは、低費で通える唯一の私塾として活動しているのである。子どもたちは「算数の不安がなくなった」「日本語ができるようになって、先生や友達と話す時は楽しくなった」と喜んでいる。しかし、交通費がないため、AIAにも通えない子どもたちがいるのだ。

教会にできる支援

11月7日、関東地区の「中高宗教部会」の勉強会で、宗教科や倫理科の教員20人ほどがAIAを見学、安藤神父とAIA塾長の中村友太郎・上智大学名誉教授から子どもたちの状況について学んだ。
初めて〝現場の人〟から話を聞いたという栄光学園(神奈川)倫理科の小野邦彦教諭は、こう語った。
「心に響くものがありました。AIAの子どもたちは、本校では出会えない子どもたちばかりです。本校の生徒たちは、将来、社会(システム)をつくる側の人間になっていきます。AIAの子どもやそこで働いている人たちに出会い、この問題を知った上で社会に出ていってほしいと思いました」
中高宗教部会は、年に3回勉強会を開き、宗教等の授業内容について学び合っている。今回は、カトリック学校でも行われているグローバル教育(地球規模的課題の理解と解決のための教育)について、「自分たちの足元から見つめ直してみよう」と、AIAを研修の場に選んだという。
担当者の一人、曉星中学・高等学校宗教科主任の松本洋教諭は、「ミッションスクールならではのグローバル化とは何なのか、宣教者が貧しい子どもたちを助けるためにカトリック学校を始めたその原点に目を向けたいと思いました」と語る。
AIAでは、稲刈りなど、課外活動も実施している。また高校進学をする際には、支度金として「奨学金」も支給している。
安藤神父は、各カトリック学校にできることとして、①AIAを〝姉妹校・兄弟校〟として位置づけ交流する②デカセギ労働者の子どもを1人以上引き受ける③日本語教室を開く④AIAの高校進学支度金を支援する――などを提案しつつ、こう強調した。
「カトリック教会は、貧しい人たちの教会と言いながら、こういう子どもたちの学校(教育)に興味を持たず、何もしないなら、それは罪だと思います」と安藤神父は語っていた。 AIAは、☎ 03-5888-5206

(次回は11月29日付掲載予定です)

足立インターナショナル・アカデミー

安藤 勇(イエズス会社会司牧センター) 【社会司牧通信146号2008年11月15日】

ー 新しい学校の始まり ー

近頃、修道会が会員のための老人ホームを開いたり、幼稚園や学校、病院を閉めたりすることは珍しくない。でも、足立区(東京)にインターナショナル・アカデミー(といっても小さな家だ)を開くのは、どういう訳だろう? リスクを冒してまでアカデミーを開く理由は何だろう?
国レベルでは、日本は何十万人という滞日外国人に、十分な日本語教育を提供しているとは言えない。実際、外国人労働者やその子どもたちは途方に暮れている。全国どこでもそうだとは言えないが、ある地域では日本語教育が火急のニーズであるのは確かだ。足立区もそうした地域の一つだ。
この数年、いくつかの小さな外国人支援ボランティア団体が、主に足立区在住の外国人労働者を対象に、日本語学習の取り組みを散発的に行ってきた。たとえば「むすびの会」もその一つだが、この小さなボランティア・グループが足立インターナショナル・アカデミーの前身だ。
大都市ではしばしば、何百人という外国人労働者がカトリック教会に集まる光景を目にする。私たちは彼らと日本語で話したり、彼らの国の言葉で話したりするが、彼らの大部分は日本語の読み書きができない。彼らは日本語学校に通う余裕もないので、結局、日本語を読み書きできないままなのだ。読み書きできないと、人に頼りがちになり、行動の自由や人権すら制限される。普通、その影響は家庭や仕事の問題、健康や法律の問題として重くのしかかり、不満や恐れ、ストレスの原因となる。多くの外国人が学齢期の子どもを持っているのに、読み書きができないために、子どもたちまでストレスや無力感を感じている。こうして、彼らは自分に自信が持てなくなる。子どもたちだけでなく、大人の人間的成長も妨げられてしまう。アカデミーはこうした状況を解決したいのだ。

アカデミーの新しさ
アカデミーのようなフル・タイムの「寺子屋」を始めるにあたって、新しいと言えるのは、外国人に日本語教育を提供することではない。このようなアイディアはずいぶん前から、教会や修道会で実現されてきた。

アカデミーには、創造的な活動を促す新しいコンセプトがある。それは、教育を受ける人を活動の中心に置く新しい教育の試みを実践するため、彼らの「パートナー」として共に働くというコンセプトだ。教育を受けるのは外国人の子どもたちであり、その親たちであり、場合によっては親子一緒のこともある。アカデミーに来てみれば、日曜の午前中に、ボランティアから日本語を習うフィリピン人の母親の横で赤ちゃんが寝ていたり、ガーナ人の男性が他の国の人3人と一緒に日本語の読み書きを習っている光景を目にすることができる。ガーナ人男性の3人の子どもは、午後から日本語と英語、数学の勉強にやってくるし、日本人である妻はボランティアを手伝っている。授業では、黒板もホワイトボードも一切使わない。重点を置いているのは一対一の関わりであり、個性の発達を重視すること、授業を楽しいものにすること、子どもも大人も、お互いに信頼に満ちた親密な雰囲気のうちに勉強できるようにすることだ。ブラジルの教育心理学者、パウロ・フレイレの言葉を借りれば、教師が生徒に教えるだけでなく、教師もまた生徒から教えられるのだ。また、大人が仕事や社会生活の面でしばしば差別され、教会でお客様扱いされていたり、子どもが学校でいじめられている場合、彼らに「自信」を与え、「力づける」(empowerment)ことがとても大切だ。だから、アカデミーは自然に、彼らの個人的悩みを聞く場所にもなる。子どもたちはアカデミーに来ると、日本語で自由に、大声で話しているが、彼らは学校に行けば、先生が何を言っているかも分からないまま、教室で何時間もじっと座っていなければならないのだ。


求められる理念
アカデミーは、キリスト教的な理念と方針-つまり、全人的な発展を目指す、全体的な教育のアプローチに基づいている。だが、こうした理念を実践するにあたっては、一般企業に要求されるのと同様の条件が求められる。つまり、一人ひとりの(特に困っている人の)ニーズに応えること、スタッフや協力者の献身的取り組み、資金、そして立地条件などだ。固い仲間意識と共に、創造性と柔軟性も要求される。いつも人々を信頼し、神の「見えない手」を信頼しながら、試行錯誤で学んでいく、リスクを恐れない姿勢も必要だ。

アカデミーが実際に動き始めたのは1年ほど前だ。アカデミーを確固たる体制のもとで運営していくために、すでに滞日外国人の教育に携わって来た経験を持ち、新たな教育施設の必要性を認識している、いくつかのカトリック修道会が集まって話し合った。これらの修道会の活動経験は貴重だった。また、人員と財政の負担を軽くするために、「共同運営」のコンセプトが基本とされた。こうして2008年2月までに、イエズス会を含む4修道会がアカデミーのプロジェクトに参加することを決めた。同じ頃、プロジェクトをスタートするのに必要な資金の大半が、国外の助成団体から提供され、教室の運営に必要な家や備品も少しずつ揃えられた。

アカデミーの重要な副次効果の一つは、若い人や退職後の人にボランティアの機会を与えることだ。アカデミーはボランティアにとって、自己実現と他者への奉仕の場となっている。もちろん、外国にボランティアに行くのも素晴らしいことだが、日本国内にも貧しい人、困っている人はいるのだ。アカデミーの運営にとってボランティアは不可欠であり、ミッション・スクールがアカデミーを、学生のボランティア派遣に絶好の場所と考えてくれるよう期待している。若いボランティアがいれば子どもたちも楽しく過ごせるし、それによって若者たち自身の生活も、もっと楽しくなるだろう。

アカデミーの場所を探すのに一月近くかかったが、幸い足立区の古い一軒家を借りることができた。最近、上智大学教員を退職したばかりの中村友太郎氏を塾長に、アカデミーは2008年6月から活動を始め、7月6日には、50人のお客様を招いて開所式を行った。7月のアカデミー利用者は延べ30人だったが、 8月には126人、9月には197人に跳ね上がり、10月には293人になった。アカデミーは、月曜を除く午前10時半~午後8時半に開いている。どうぞ、お気軽にお出でください。
【足立インターナショナル・アカデミー】
〒123-0816 足立区梅島3丁目4-12
Tel. 03-3880-8487 / Fax. 03-3880-8489