教育格差を縮める取り組みを

カトリック新聞  2015年11月29日  第4316号

AIA teachers orientation Nov 2015学校教育を考える

「外国につながる子ども」たちの学校教育を考えるシリーズ。第39回は、4つの教育修道会が7年前に立ち上げた低費私塾「足立インターナショナル・アカデミー」(AIA)を紹介する。外国人労働者が多く暮らす東京都足立区で、日本語に不自由する子どもたちの学習支援や大人たちの日本語識字教育を行っている。11月7日には、関東地区カトリック小中高連盟「中高宗教部会」の教員らがAIAで第14回勉強会を行い、日本社会の教育の現状について考えた。

東武線梅島駅から徒歩10分、町工場などが立ち並ぶ住宅街で、AIAは民家の2階を借りて、毎週火曜日から土曜日まで(午前11時~午後7時)、日本語や主要教科の学習支援を行っている。
対象は、外国人移住労働者の子どもや、国際結婚で生まれた「ダブルの子ども」らなど、小学生から高校生まで、そして日本語の読み書きができない大人たち。AIAは予約制で、学生や社会人のボランティア講師に一対一で勉強を見てもらうことができる。しかも月謝は2千円で、何回でも学習できる。昨年度は、のべ1460人が利用している。
労働者のまち、足立区は人口の3%が外国人(外国人登録者)で、東京23区で2番目に外国籍住民の割合が多い。
小学校の設置数は都内最多の72校で、全校が区立。しかし、中学校は39校、高校は11校と少ない。教育の機会均等や進学保障という観点で見ると、教育環境は「良好」とは言い難いだろう。
そうした中で、2008年、教育事業を行っている4修道会(イエズス会、聖心会、幼きイエス会、ベリス・メルセス宣教修道女会)がAIAを立ち上げた。日本経済を〝底辺〟で支えている外国人労働者等の子どもたちの成長を支えると同時に、そこで関わるボランティア自身も共に成長する「共育」を目的としている。

AIA代表の安藤勇神父(イエズス会)は、「外国につながる子ども」たちの現状をこう話す。
「例えば20年以上日本に暮らして、日常会話ができるフィリピン人の大人でも、日本語の読み書きができないケースが多くあります。日本語の問題に加え、親が共働きや夜勤で、子どもの勉強を見てあげられないので、子どもは日本語が身に付かず、低学力になってしまうのです」
しかも公立学校は学齢主義を導入しているため、日本語の習熟度に関係なく、彼らは年齢相当の学年に編入させられる。AIAに通うエチオピア人の少年も来日したばかりで、困難に直面している。

その少年は、地元の公立中学校に編入し、年齢より1つ下の学年で勉強することになったが、英語が話せる教員は1人だけ。他の教員とは意思疎通が図れず、日本語の授業も全く分からず、毎日教室の中で一人ぼっちで座ったまま過ごす。安藤神父がAIAスタッフとして週3回中学校に足を運び、その少年の学習支援に携わるが、限られた時間で、年齢相当の基礎学力は見に付けられない。
しかし中学校側はこう言い放ったという。「勉強ができなくても大丈夫です。ちゃんと卒業させますから」。形式的に中学卒業資格が得られたとしても、現実問題として「低学力」は「低学歴」につながり、それは「職業選択肢の激減」の要因となる。結果的に「貧困の連鎖」が続いていくことになる。
そうした「負の連鎖」を断ち切ろうと、AIAは、低費で通える唯一の私塾として活動しているのである。子どもたちは「算数の不安がなくなった」「日本語ができるようになって、先生や友達と話す時は楽しくなった」と喜んでいる。しかし、交通費がないため、AIAにも通えない子どもたちがいるのだ。

教会にできる支援

11月7日、関東地区の「中高宗教部会」の勉強会で、宗教科や倫理科の教員20人ほどがAIAを見学、安藤神父とAIA塾長の中村友太郎・上智大学名誉教授から子どもたちの状況について学んだ。
初めて〝現場の人〟から話を聞いたという栄光学園(神奈川)倫理科の小野邦彦教諭は、こう語った。
「心に響くものがありました。AIAの子どもたちは、本校では出会えない子どもたちばかりです。本校の生徒たちは、将来、社会(システム)をつくる側の人間になっていきます。AIAの子どもやそこで働いている人たちに出会い、この問題を知った上で社会に出ていってほしいと思いました」
中高宗教部会は、年に3回勉強会を開き、宗教等の授業内容について学び合っている。今回は、カトリック学校でも行われているグローバル教育(地球規模的課題の理解と解決のための教育)について、「自分たちの足元から見つめ直してみよう」と、AIAを研修の場に選んだという。
担当者の一人、曉星中学・高等学校宗教科主任の松本洋教諭は、「ミッションスクールならではのグローバル化とは何なのか、宣教者が貧しい子どもたちを助けるためにカトリック学校を始めたその原点に目を向けたいと思いました」と語る。
AIAでは、稲刈りなど、課外活動も実施している。また高校進学をする際には、支度金として「奨学金」も支給している。
安藤神父は、各カトリック学校にできることとして、①AIAを〝姉妹校・兄弟校〟として位置づけ交流する②デカセギ労働者の子どもを1人以上引き受ける③日本語教室を開く④AIAの高校進学支度金を支援する――などを提案しつつ、こう強調した。
「カトリック教会は、貧しい人たちの教会と言いながら、こういう子どもたちの学校(教育)に興味を持たず、何もしないなら、それは罪だと思います」と安藤神父は語っていた。 AIAは、☎ 03-5888-5206

(次回は11月29日付掲載予定です)

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