東北被災地ボランティアにつどう若者たち

社会の窓から⑧ 村山 兵衛(イエズス会神学生) 【社会司牧通信165号2012年6月15日】

東日本大震災はもはや「終わった」出来事なのか。誰もこの問いに「はい」とは答えまい。しかし離れた土地で暮らす者にとってその実感は薄い。津波による大量の「がれき」は、依然として何メートルもの高さの山のまま沿岸地域に残っている。推定1.5トンとされる津波漂流物は、太平洋の波に運ばれて、北米西海岸に姿を現し始めている。復興のめどの立たない産業、故郷を奪われた人たちが方々から集まる仮設住宅内の生活不安、そして大切な人を失い、家族を引き裂かれ、思い出したくないつらい記憶に今なお苛まれている大勢の人々――これらはマスメディアの報道が下火になっても決して黙殺されてはならない現在進行中の事実である。緊急性を要する支援活動が減ってきているとはいえ、被災地ボランティアの活動には、まだまだ多くの人手を必要としている。

ゴールデンウィーク中にわたしは、イエズス会の中井神父、サリ神父によって企画された「東北被災地ボランティアと祈りのプログラム」にスタッフとして参加した。中国地方と関東圏の教会および上智大学から約20人の若者が集まり、イエズス会スタッフ6人と共に5つのグループに分かれて、それぞれの滞在地で2 ~10日間被災地ボランティア活動をした。滞在地は、カリタス・ジャパンおよび日本各地のカトリック教会が運営する宮城・岩手県内の5つのボランティア・ベース(釜石、米川、塩釜、大船渡、大槌)であった。わたしもイエズス会スタッフのひとりとして米川ベースで5人の仲間と活動と祈りを共にし、多くの発見を持ち帰った。最終日には仙台のドミニコ会修道院にみなが合流して、分かち合いとミサをして、それぞれ帰途に就いた。

どんなに努力しても次々と迫ってくる復興への需要に対して、ボランティア活動をする者は、己の無力感に気づかされる。わたしは、町のほぼ全体が津波で大打撃を受けた南三陸町で、今なお残る大量の「がれき」の撤去および分別に参加させていただいた。震災被害の凄まじさに圧倒される日々であった。作業中にある家族が、土台だけ残された家屋の敷地に花を捧げているのを見た。休憩を終えて作業現場に再び戻るわたしたちに、この母娘は深々とおじぎをした。感謝されるようなことはまだ少しも果たせていないと感じ、わたしは複雑な心境であった。そんな様子に気づいてか、この母と娘さんはわたしに話しかけて来られ、ちょっとの立ち話のつもりが、色々お話を伺う機会となった。この母は、夫も娘婿も津波によって命を奪われ、自分と娘さんだけが助かった次第をお話し下さった。土台だけ残されたこの「わが家」に来るのは、いまでも勇気がいるし辛いという。

震災を生き延びて、これから暮らしを立て直そうとしている人々にじかに接するときほど、ボランティアの非力さに気づかされることはない。今なお苦しみを抱え、震災の傷の癒えることを待ち望んでいる人々が、大勢いるのである。この家族は、わたしたちのような若者が遠くからボランティア活動に来て、元気に汗を流して「がれき」を拾って集めていく姿に、自分たちも元気を得ていると言っていた。わたしたちが拾っている物をつぶさに見れば、それは南三陸の漁師たちが長年育ててきた牡蠣の貝殻であり、漁師たちの網である。衣服や靴は地元民の生きたあかしであり、海水に浸かった写真や賞状は、残されたわずかな「家族の思い出」なのである。

これは決してわたしだけの体験ではない。効率や成果という観点では決して見えてこないボランティアの意義があると実感する。実際、今回のプログラムで祈りと経験をともにした多くの若者が、様々な思いを持ち帰っていった。もちろん復興支援では具体的な成果や効率を無視することはできない。しかし共感と支援の必要性と人間同士の助け合いの精神は、就職難に見舞われる競争社会のただ中にあっても、忘れてはならないものではないか。復興に向かう地元の人々への配慮と思いやりを通して、多くの若者が何かを感じて持ち帰り、また被災地ボランティアに出かけてゆく。実に被災地には、「人の手とこころ」を通して行われるボランティア活動が、今なお必要とされているのである。  

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