『難民への旅』 山村 淳平著/現代企画室/2000年

【 書 評 】 (小山 英之、イエズス会司祭) 【社会司牧通信165号2012年6月15日】

この本の著者、山村淳平氏は、病院勤務を経て各国の被災民や難民の医療支援にたずさわり、現在は横浜の診療所に勤務し、難民の無料診断を行いながら、アムネスティ・インターナショナル難民チームの企画する難民セミナー・シンポジウムや茨城県の牛久収容所訪問など難民支援に積極的にかかわっておられる方です(参加したい方はアムネスティ・インターナショナル日本のホームページをご覧ください)。他の著書に、編著として『壁の涙―法務省「外国人収容所の実態」(現代企画室、2007年)があります。

1991年フィリッピンのピナツボ火山で大噴火が起き、周辺住民数百人が被災し、数千人が亡くなった際に設置された避難地に派遣されたことをきっかけに海外での医療救援へと入っていかれます。「社会の異変がおこれば、もっとも被害を受けるのは、少数民族・子ども・女性などの社会的弱者である。そのことをやせ細った少女に接してはじめて肌で実感した。彼・彼女らは目にみえない存在としてあつかわれ、社会から排除され、制度から疎外されている。それだけに病気になりやすく、しかし治療へとつなげられず、しだいに体はむしばまれ、病気の悪循環におちいる。それらを引き起こしている根本原因に貧困―むしろ富の偏在といったほうが適切である―や差別、そして国の社会構造などがふかくかかわってきていることに気づかされた」。フィリピン後、ビルマ西端、ルワンダとザイール、ビルマ東端、アフガニスタンで医療活動に従事する経験から、医療活動で人を救えるのか、救助はどのようにすすめればよいのか、そもそも援助とは何なのか、自然災害であっても本当の被害をもたらすものは何か、民族とはいったい何なのか、人はなぜ難民になるのか、国家の暴力とは一体何であるのか、といった根本的な問題に鋭い洞察を得、本書でそれを提示しています。

その後日本にもどり、外国人診察にたずさわり、外国人収容問題にかかわり、外国人や難民を支援してこられた経験の結晶が本書です。日本にやってくるアフガニスタン人、ビルマ人、クルド人とイラン人の実情、日本社会の構造、世界の近代化が生み出す難民といったテーマについて詳しく叙述され、難民問題・民族問題に関心ある人すべてが読むべき本です。

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