イエズス会アジア太平洋協議会(JCAP)移民に関するワークショップ(ソウル)

移民
イエズス会アジア太平洋協議会(JCAP)移民に関するワークショップ
2011年5月15~17日、イエズス会使徒職センター(ソウル)

 【社会司牧通信160号2011年7月15日】

「境界線を越える橋をかけるのはイエズス会の伝統であり、今日の世界の状況では特に重要である。砕かれ分断された世界をつなぐために必要なのは、ただキリストの愛と、海を越えてもザビエルとイグナチオを結んだような心のきずなと、世界のどこにでもわたしたちを派遣する従順によって、わたしたちが一つになることである」(第35総会第3教令、17)

<概観>
移民の送出国と受入国で、直接、移民のために働いているイエズス会員や協働者が初めて一堂に会したワークショップが、2011年5月15~17日、ソウルで開かれた。このワークショップの目的は、次の通り。
● 移民によりよく奉仕するために、各国のセンター同士の連携を強めること
● お互いの経験や専門家の知識から最善の働き方を学んで、能力を高めること
● -共同の行動計画をまとめること

ワークショップはイエズス会アジア太平洋協議会(JCAP)の主催で開かれ、イエズス会韓国管区から惜しみない支援を受けた。韓国、日本、台湾、インドネシア、ベトナムから13人が参加したほか、「よき牧者」アジア太平洋ネットワークの代表も1人参加した。

<プログラムのハイライト>
Fr. Denis Kim(JCAP社会使徒職コーディネーター)は、アジア(特に東北アジア)における移民の概観、教会とイエズス会が直面する課題を紹介した。キム神父のプレゼンテーションは、参加者が移民問題の大枠を見てとり、それが文化や宗教、開発・発展といかに結びついているかを理解するために役立った。参加者の一部からは、文化や宗教、開発・発展など、相互に関連する問題をよりよく理解することは、移民のニーズにより深く応える上で役立つ-というコメントがあった。キム神父はまた、受入国における移民の状況を概観したが、これも参加者にとって有益だった。この概観の枠組みは四つの要素からなっている-国、労働市場、文化、市民社会だ。

Ms. Jeong Gue-sun(「移民と連帯」代表)は、韓国の市民社会が移民にどのように対応しているか話した。参加者は、韓国における移民の状況や移民政策の進展、市民運動の役割について学んだ。参加者の主な収穫の一つは、移民に関する取り組みが抱えている課題とは、移民自身のトレーニングとエンパワメント(能力向上)によって、彼らが自分たちの目標を実現するために積極的に働けるようにすることであると気づいたことだ。この点についてMs. Jeongによると、カトリック教会からの支援を受けたフィリピンからの移民が、韓国でもっともよく組織化されている。Ms. Jeongの意見では、国際協力において鍵となる分野の一つは、受入国で起こるさまざまな問題や搾取を防止するための、送出国におけるシステムの強化だ。送出国・受入国の双方が、情報や世論喚起、移民に向けての準備におけるさまざまなギャップを解消するために、協力して当たるべきだ。

参加者はまた、Hyehwadongフィリピノ・カトリック共同体(HFCC)を訪ね、彼らが移民グループとして実によく組織化されていることに驚いた。評議会と小委員会に1,500人のメンバーと200人のボランティアを抱える同グループは、韓国最大のフィリピン人共同体だ。HFCCは、フィリピン外国宣教会(Mission Society of the Philippines)のフィリピン人神父が指導司祭となり、カトリック・ソウル大司教区の惜しみない援助によって、活動拠点としてダウンダウンに4階建てのビルを構えている。HFCCのエンパワメントと組織化のやり方は参加者にとって、自国に持ち帰って応用しうる最良のモデルと感じられた。

[各センターの情報交換]
上記の講演と体験学習の後、参加者は各センターの活動や、各国の移民事情について情報交換した。参加者はこの情報交換から、精神的援助の重要性、移民の子どもたちの教育、移民政策を改善するための世論喚起などについて、互いに最善の方法を学んだ。受入国で働く参加者は、送出国からの参加者との交流から、移民の願いをより深く理解することを学んだ。参加者は、マレーシアでひどく搾取された家事労働者、Nirmalaのケースに深くショックを受け、そうした問題を解決するために、将来的に共同行動を取ることが必要だということ、そして、そうした共同行動は南西アジア地域でこそいっそう重要だということを実感した。

<参加者のふりかえり>
聖書にもとづくふりかえりとワークショップでのインプットの後、参加者は共に祈り、最優先で解決すべき移民のニーズを識別した。識別で挙げられた分野は、移民の不安定な状況、共同体の必要性、移民としての権利に関する知識、自分たちのことばで支援を受けるシステムの充実、自国でよりよい準備をしてから出発すること、家族関係の弱体化、移民の根本原因である貧困の緩和、などだ。

こうしたインプットを見ると、移民の現実とその全てのプロセスにおけるニーズに対して、参加者が鋭い感受性を持って見ていることが、今回の議論の大きな流れを作っていると分かる。それは多分、参加者が最前線で移民に付き添っている具体的な状況から来るのだろう。このことがイエズス会難民サービスと似通っているのは、当然のことだ。JCAP移民プロジェクトは、こう問題提起する。「アジア太平洋における移民の大きなニーズに応えるために、イエズス会がなしうる独自な貢献とは何か」。参加者のふりかえりとインプットから見いだされるJCAPネットワーク独自の貢献とは、「移民に身近に付き添うことで、何が必要かを探り出す能力と、移民の視点からものごとを見るやり方」だろう。

参加者のふりかえりのもう一つの特徴は、移民に効果的に奉仕するために、送出国と受入国双方のセンターが協力して働く必要が、ますます明らかになってきたことだ。それによって、よりよい移民のための準備、情報交換、国外にいる移民や本国に残っている家族への付き添い、教育、司牧的世話、公共サービスの利用、移民の権利擁護、世論喚起などを実現することができる。これもまた、イエズス会独自の貢献となりうる。「このようなJCAPの送出国と受入国のネットワークの存在は、より総合的なサービスの提供を可能にする」。アジア太平洋の移民の半分が、地域内での移動であることを考えると、このネットワークは特に重要だ。将来的には、JCAPのネットワークが共同の世論喚起キャンペーンを行うことも視野に入れている。

<共同行動計画>
参加者の提案に基づいて、以下の行動計画が承認された。

1.送出国と受入国の間で処理するケース
● ここで言う「ケース」とは、ある人がある場所から他の場所に移動し、何かの問題を抱えて助けを求めている場合だ。あるケースについて、送出国から受入国まで(あるいはその反対)付き添う必要がある場合、我々の各センターから、定められた手続きに従って支援が行われる。
● この手続きには電子メールや携帯電話などで連絡を取ること(ネットワーク・メンバーの緊急連絡先リストがすでに配布されている)が含まれ、個々のケースの経過・移民本人と送出側と受入側の情報・連絡先事務所の住所などの情報が提供される。
● 各ケースの処理費用はさしあたり、それぞれのセンターが負担する。
● 6ヶ月以内にこの手続きの原案を作成し、ネットワークのメンバーから意見を集める。
● この手続きの実施後、6ヶ月もしくは3~5ケースごとに評価が行われる。

2.移民や家族への共同の付き添い
● 家庭生活に及ぼす悪影響を解消するため、送出国と受入国のネットワーク・メンバーが互いに調整して、移民とその家族に付き添う。この付き添いには、家族を本国に残している移民のケースだけでなく、移民先でその国の人と結婚しているケースも含まれる。
● 最初に、さまざまなケースのデータを集めて、共通の問題点を洗い出す。
● 改善すべき取り組みとして、移民のための集会プログラム、文化的な違いについての教育、医療支援、家庭の意味や大切さについての教育、受入国と送出国の担当者同士のネットワーク作りなどが挙げられる。

3.移民の準備:教育とオリエンテーション
● 移民する人の本国では、しばしば、移民先の国の正確な情報が不足している。
● JCAPネットワークは、受入国(日本、韓国、台湾、シンガポール、マレーシア)から利用可能なあらゆる情報(冊子やホームページなど)を集めて、送出国(インドネシア、中国、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、タイ)に提供し、ネットワーク・メンバーが外国に行こうとしている人に配れるようにする。
● この情報は、移民出発前の教育やセミナーでも利用できるようにする。
● 一定期間の後に、そうした冊子などの有効性を評価する。
● 送出国の代表者の住所を5月末までに集約し、冊子などを6月中に送れるようにする。

<評価>
今回のワークショップの全体的な感想は、一種の安心感だった。ワークショップに参加したメンバーは、特に初めて移民送出国の視点から話を聞くことができて、移民の問題について大きな枠組みと深い理解を得ることができたと実感した。それによって参加者は、よりいっそうのモチベーションと勇気、自分たちの仕事の意義についてのより深い理解を得ることができた。また、一部の参加者は、移民のエンパワメント、協力者の人材発掘、文化・宗教・経済問題への注目など、新しい取り組みのヒントを得た。

今回のワークショップは、JCAPネットワークのメンバーだけでなく、「よき牧者」のシスターたちとの関係を築くのにも役立った。課題や仕事が山積みなのは承知の上で、参加者は、移民に関する共同プロジェクトが具体的に動き始めたと実感した。このワークショップは送出国と受入国に「橋をかける」助けとなったが、それは第35総会の要請に応える一つのステップでもある。もう一つ明白なことは、移民の問題に直接携わっている協働者を含めた、より小規模で焦点を絞った集まりを開くことが、より効果的な方法だということだ。そのためにも、現在ネットワークで行われているコミュニケーションが、きわめて重要になるだろう。

<次の段階>
ネットワーク・メンバーは、上記の行動計画に取り組む。今回の集まりに関する報告は、移民に関するタスク・フォースとJCAP事務局に送られる。JCAPは、このネットワークのために、常勤のコーディネーターを引き続き探す。コーディネーターの主な役割は、今回の集まりで始まった第一歩に続いて、ネットワーク・メンバーと共により総合的な取り組みを促すことだろう。段階が進めば、国境を越えて移民のためのより総合的な付き添いの取り組みが行われることになるだろうが、それは社会使徒職にとっても新たなモデルの一つとなるだろう。

次の課題は世論喚起キャンペーンだろう。この点でJCAPネットワークは、個々の具体的な移民問題について考察と対話を繰り返しながら、取り組むべき普遍的なキャンペーン・テーマを見つけ出す必要がある。これが、次のワークショップの焦点となるだろう。

2011年5月30日

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